滑舌

 今日も妻と夕食を食べ、いつものようにテレビの夕方のニュースを見ていた。
 テレビを見ていた私の目が光った。と、思う。
「多国籍軍参加・・・クックックッ・・」私は思わず呟いていた。すると
「もうダメよ。言っちゃ・・・一回だけだからね」妻が私をにらんだ。
「・・えー、何で、いいじゃん、何でー」
「何でも、ダメ!」
 私はテレビで難しい言葉や言いにくい言葉を耳にすると、何度も言ってみたくなってしまうのだ。妻の呪文のせいではない。そういう性格らしい。口ずさんでいると、何か楽しいのだ。
『いいじゃん、もう一回くらい・・ケチ・・・』私は心の中で悪態をついた。
 しばらくすると、今度はガムのコマーシャルがテレビで流れた。私の目が光った。と、思う。
「あっ、サイセキカイカ・・・サーセキカイカだって、クックックッ・・・」私は大喜びで再石灰化を連呼した。正しく言えてなかった。
『あー、気持ちいい!』
正確に言えてないところが又楽しいのだ。
「もう、ダメだって。しつこいなぁ。ちゃんと言えてないよ。サイセッカイカ!」
 妻は、私が正しく言えないのが気に入らないのか、しつこく何度も言うのが気に入らないのか、私をにらみつけて注意する。
「サイサキカイカ? あれ・・・サイセッカイカ・・クックックッ、言えた言えた」
「しつこい! もう言っちゃダメだからね。分かった?」
『ちぇ、つまんないの。まあいいか』
妻が本当にキレると困るので、私は心の中で
『サイセキカアカ? いやサイセッカイカ』と呟いた。
 今、一番のお気に入りの言葉は
『骨粗しょう症と車掌はシャア少佐』だ。
 しかし、妻もテレビを見ていて、突然言葉を発するときがある。英会話だ。英会話と言っても話せるわけではない。Rとthの発音が含まれているときなど、得意げに口に出して発音し、ひとりで笑っている。
「ローリング・サンダーだって、ルューリング・センダー。ひゃっひゃっひゃっ・・・」と言う具合にだ。
『何が楽しいんだか。人の事言えないぞ・・・うー・・』
 話は違うが、妻が滑らかな口調で早口言葉を言ったとき。私は
「カツレツがいいね。キミは」と誉めたことがある。
「えっ、何? カツレツって」妻はキョトンとしていた。
「だから、カツレツ」
「カツレツじゃなくて、カツゼツでしょ」妻が反論した。
「・・クックックッ、カツゼツだって・・カツレツだよ。何言ってんの・・・クックックッ・・」
 妻は電子辞書を引いて私に突きつけた。
「ひゃっひゃっひゃっ、間違っているのは、あなたの方よ。ひゃっひゃっひゃっ」勝ち誇ったように妻は笑った。
『滑舌か・・・カツレツは・・・まあいいか』
 ちょっと恥ずかしい勇者だった。

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この記事へのコメント

あちゃも
2006年10月04日 15:25
わ・た・く・し・は滑舌のよい、森に住んでいる吟遊詩人です。
勇者
2006年10月04日 16:20
>あちゃもさん
オー!パチパチパチパチ!森の吟遊詩人・・エルフ族ですね。これからも、コメント、宜しくお願いします。話は変わりますが、妻が再放送で見ていた「相棒」と言うドラマ、ナカナカ面白い。知らなかったー。

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